クシタニ名古屋東店が産声をあげたのは、1985年3月。
まさにバイクブームの絶頂期でした。
愛知県のクシタニショップは名古屋店に次いで二店舗目。
当時実験的に各エリアに一店舗づつ展開していた、カフェ併設の形態でのオープンでした。
そこから30年以上に渡って、このお店は数多のライダーと共にありました、
空前のレーサーレプリカブームの終焉とともにやってきたネイキッドブーム。
90年代に入りやってきたエンデューロブームやアメリカンブーム、そして免許制度の改正に伴うビッグバイクブームを経て、現在の多様
化・細分化の時代を迎えます。
オートバイのラインアップや取り巻く環境、それにオートバイウエアも大きく様変わりしました。
しかしどんなに時代が変わっても、私たちとオートバイとの関係性というのはそれほど大きくは変わってないのではないかと思います。
個人的な話しになりますが、僕自身がオートバイに乗り始めてからももう30年以上経ちます。
その間何台かのオートバイを乗り継ぎ、僕の生活環境も様々に変化しましたが、オートバイだけは常に僕の生活の身近にありました。
もちろんお互いの距離はその都度近くなったり遠くなったりはしましたけど、僕のライフスタイルの中にオートバイが組み込まれなかった瞬間は一度もありません。
この30年のあいだ、日本全国あちこちにツーリングに出かけ、それぞれに思い出深くはありますが、僕がオートバイを身近に感じる瞬間というのは実のところ案外もうちょっと日常生活のなかのふとした時間だったりもするのです。
20代のほぼ全ての時間。
僕は日常的な足は全てオートバイに頼っていました。
通勤だけでなく、街へ買い物へ出かける時にももちろんオートバイです。
自宅から繁華街で出向くとき、なるべく混まず、且つ最短で辿り着くルートを色々と試してみるのも密かな楽しみでした。
そしてその度に新しい道や、新しいお店との出会いがありましたし、そんな出会いもオートバイの機動性があってのことです。
たとえば冬の寒い休日。
映画を観た後に、楽器屋さんで新しいギター弦とピックを数枚、カフェが併設された本屋さんで文庫本を数冊買い、コーヒーを飲みながらそのうちの一冊を開く。
暮色が濃くなる帰り道、最近見つけたお蕎麦屋さんに立ち寄り、暖かい天婦羅蕎麦を食べながら店内のTVニュースを眺める。
そこから自宅までのルートは・・・さて・・・今日はこっちの道を試してみようかな?と気まぐれに曲がり角をまがってみる。
不思議とそんななにげない一日が、僕にオートバイをより身近に感じさせてくれたりもしました。
スピードを出さなくても、遠くへ行かなくても、オートバイは僕たちの生活に確実に充足を与えてくれます。
雨に打たれても寒さに震えても、必ず最後には「今日はいい一日だったな」と思わせてくれるマジックがあります。
オートバイとの付き合い方は十人十色だと思いますが、このマジックだけはライダー全てに平等かつ普遍的なものなんじゃないでしょうか。
だからこそ一度このマジックにかかった人々はオートバイから離れられないのでしょう。
そしてそんな人々によってお店も30年以上に渡って支えられてきました。
今から30年後は無理にしても、せめて20年後に僕が今と同じようにオートバイに乗っていられるか?となると、その自信は相当心もとないものがあります。
しかしこれからの10年、20年、僕の、そして皆さんの身近にオートバイがあるように、このお店もライダーの身近にあり続けられたら・・
今そんなことを想っています。
ー2017年10月13日 雨ー